世界におけるPFASの基準値とは?日本の最新動向とPFAS規制の課題
- 水処理

PFASは、分解されにくく環境や体内に蓄積する性質を持つことから、「永遠に残る化学物質」と呼ばれています。生態系や健康への影響が懸念されており、世界各国で飲料水に含まれるPFASの基準値を定める動きが進んでいる状況です。
本記事では、世界におけるPFASの基準値や最新動向とともに、PFAS規制の現状と課題について詳しく解説します。
目次
世界で規制が進んでいるPFAS
PFAS(ピーファス)とは、主に炭素とフッ素からなる化学物質のことであり、日本では「有機フッ素化合物」として知られています。PFASは現在までに4,700種類以上が確認されており、そのなかでも代表的なものがPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)です。
PFOSやPFOAは、熱や薬品、紫外線に強く、水と油をはじく特性を持つことから、フライパンのコーティングや食品包装紙など、私たちが日常的に使うものに活用されています。
しかしPFASは、自然環境や体内でほとんど分解されず、蓄積しやすい化学物質です。そのため、一度環境中に放出されると地下水や水道水などに残り続け、健康に悪影響を及ぼす可能性があると懸念されています。
特にPFOSやPFOAは容易に分解されない性質であり、欧米をはじめとした世界各国で規制の対象となっています。
関連記事:【更新】PFAS(有機フッ素化合物)とは?規制や除去する方法を徹底解説!
世界におけるPFASの基準値

PFASのなかでも特に環境や健康への影響が懸念されるPFOSやPFOAについては、アメリカやカナダ、ドイツなどで、飲料水中の濃度の基準値が定められています。一方で、世界保健機関(WHO)では、PFOSとPFOAの基準値について議論が続いている状態です。
ここでは、世界各国や国際機関における基準値の設定状況について、最新の動向を解説します。
国・機関の名称 | PFOS目標値 | PFOA目標値 |
---|---|---|
世界保健機関(WHO) | 100ng/L※暫定ガイドライン値案 | 100ng/L※暫定ガイドライン値案 |
米国環境保護庁(USEPA) | 4ng/L | 4ng/L |
カナダ | 600ng/L | 200ng/L |
ドイツ | 100ng/L ※暫定的な指針値 | 100ng/L ※暫定的な指針値 |
日本 | PFOSとPFOAの合算で50ng/L ※暫定目標値 |
世界保健機関(WHO)
世界保健機関(WHO)では、飲料水に含まれるPFASの基準値設定に向けた議論が行われています。2022年にはPFOSとPFOAについての背景文書が公開され、世界中のデータをもとに暫定的な基準値の案が示されました。その内容では、PFOSとPFOAがそれぞれ飲料水1リットルあたり100ナノグラム(ng/L)という数値が提案されています。
当初は2022年後半から2023年前半にかけて、正式なガイドラインが発表される予定でしたが、現時点では公表されていません。現時点での基準値はまだ暫定的な段階であり、今後の調査や議論を経て、より明確なガイドラインが整備される見込みです。
参考:WHO飲料水水質ガイドライン策定のための背景文書「飲料水中のPFOS及びPFOA」|環境省
米国環境保護庁(USEPA)
アメリカの環境保護庁(USEPA)は、PFASの規制を先行して進めています。2022年4月10日、米国環境保議長(USEPA)は6種類のPFASに関する最終的な飲料水規制(NPDWR)を発表しました。これにより米国ではPFASに関する初の法的拘束力のある飲料水基準が設定されました。
その数値は、PFOS、PFOA各々4ng/Lと、従来の基準(合算で70ng/L)と比べて極めて厳しいものとなっています。これは、近年の研究によってPFASの健康への影響がより明確になってきたことを受けて見直されたものです。
さらに、2023年3月に公表された第一種飲料水規則案では、PFOSとPFOAは「ヒトに対しおそらく発がん性がある」「発がん性の閾値に関する情報が不十分である」とされています。つまり、PFOSとPFOAはおそらく発がん性があるものの、どの濃度以上だと発がんリスクがあるかの明確なデータがそろっていない、ということです。
そのため、PFOS及びPFOAの理想的な基準値(MCLG)として、「ゼロ」が提案されましたが、実際の処理の限界を考慮し、現実的な規制値案として4ng/Lが飲料水基準として設定されています。このようにアメリカは、PFASのリスクに対して世界のなかでも厳しい対応を進めています。
カナダ
カナダでは、飲料水の新たな目標値に関する技術文書が2023年に公表されました。そこでは、PFOSやPFOAといった特定の物質だけでなく、検査で測定可能な複数のPFASをまとめて評価し、その合計値を30ng/Lとする案が示されています。
30ng/Lという数値は、国内の調査データや分析方法の信頼性、浄水処理での除去のしやすさといった実務的な観点を踏まえて設定されたもので、人の健康に直接的な影響を示す基準ではありません。
従来のガイドラインによるとPFOSが600ng/L、PFOAが200ng/Lとされていたため、今回の提案は大幅に厳しい基準となっています。ただし、現時点では最終的な決定はまだ発表されていません。カナダでもPFASの規制は強化される方向に進んでおり、今後の動向が注目されています。
ドイツ
ドイツでは飲料水に関する法律が2023年に改正され、PFASに関する新たな規制が導入されました。
具体的には、まず20種類のPFASを合計した濃度が100ng/Lを超えてはいけないとされ、さらにPFOS・PFOA・PFNA・PFHxSの4種類を対象とした合計値は、20ng/Lが上限とされています。
それぞれ100ng/Lの規制が2026年1月から、20ng/Lの規制が2028年1月からと段階的に適用される見込みです。
関連記事:最新のPFASの規制動向と国内におけるPFASの発生状況について
日本のPFAS規制について
日本では地下水や河川からのPFAS検出が相次いだことを受け、2020年2月、暫定目標値としてPFOSとPFOAの合算値で50ng/Lが設定されるとともに、水質管理目標値設定項目に位置づけが変更されました。
その後、厚生労働省と環境省ではそれぞれ国内外の科学的知見及び検出状況の収集・評価を行い、対策方法の検討を進めてきました。その結果、環境省は2024年12月に開催された専門家会議において、PFOS及びPFOAを2026年4月1日より水道法上の「水質基準」に引き上げる方針を示し、了承されました。
「水質基準」に引き上げられることで、自治体や水道事業者、専用水道設置者は3ヶ月に1回の水質検査が必用になるとともに、基準値を超過した場合の改善が法律によって義務づけられることになります。
ゼオライト株式会社では、こうした社会的な変化に先駆けて、お客さまの原水で実際にPFAS除去を行っています。さらに、既存装置にあわせて最適な処理方法を提案し、安全な水の確保を実現。企業だけでなく、地域社会全体が安心して水を利用できる環境づくりに貢献しています。
参考:「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」及び「水道法施行規則の一部を改正する省令」の公布等について|環境省
PFAS規制の現状と課題

PFASの規制は世界的に進められている一方で、いくつか課題があります。ここでは、PFAS規制の現状と課題について解説します。
PFAS規制における基準の設定が難しい
PFAS規制の最大の課題は、すべてのPFASに対して統一的な基準を設けることが難しい点にあります。PFASは、未だ確認されていないものを含めると、約1万種類以上あるとされる化学物質であり、種類ごとに性質やリスクが異なります。
そのため、一律に「PFASはすべて〇〇数値以下なら安全」と基準値を定めるのは現実的に困難です。現在の規制は、PFOSやPFOAといった代表的な物質を対象に進められていますが、その他の多様なPFASへの対応が今後の大きな課題となっています。
PFASの処理には技術が必要
PFAS規制のもう一つの課題は、PFASを地下水や水道水から取り除くためには高度な技術が必要だという点です。PFASは分解されにくい性質を持っており、種類や濃度、処理する水の量によって最適な処理方法が変わります。
現在有効とされている処理として挙げられるのは、粒状活性炭、イオン交換、逆浸透膜(RO膜)などです。特に粒状活性炭は比較的広く使われており、多くの浄水施設で汚染物質の除去に活用されています。
しかし、技術の導入や運用コストの高さといった課題が残されており、より効果的で持続可能なPFAS処理技術の確立が求められています。
ゼオライト株式会社のPFAS処理技術
PFASは分解されにくく、水から安全に取り除くには高度な技術が必要です。そこでゼオライト株式会社では、地下水(井戸水)のPFASを高い水準で除去できる「井水浄化システム」を提供しています。
当社の井水浄化システムでは、高純度で安全な水を安定的に生成でき、ホテルや病院、商業施設など水の使用量が多い施設に最適です。水道代のコスト削減や災害等による断水回避など、幅広い用途で活用できます。さらに、地下水(井戸水)の水質や用途に応じて処理方法を最適化でき、幅広いニーズに対応可能です。
ゼオライト株式会社のPFAS処理技術で、より安全で高品質な水を確保できるようになります。継続的に安心して利用できる水環境をお求めの方は、ぜひご相談ください。
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水処理プラントに関するご相談はゼオライト株式会社へ
ゼオライト株式会社は、水処理プラント及びメンテナンス事業を軸に、50年以上にわたってお客様の期待を超える「良質な水」と「メンテナンスサービス」を提供し続けてまいりました。
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【ゼオライトの実績】
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